調布の部屋
調布の部屋
<異なるものがひとところに隣り合う>
調布にある70平米程の3LDKマンションを部分的に改修する計画。
施主は、片や言語学の研究者で、音楽、映画、サブカルチャーに造詣が深い本好きな夫婦である。
既存の部屋へ行くと、下地やフローリング、建具などは十分にまだ使える状態にあるが、特段良し悪しもないといった一室で、洋室の隣につくられた本畳の和室、余ったスペースにあてられた小さな床の間が、唯一その場所の拠り所として淡色を発していた。
お二人の生活の背景として拠り所をつくること、また部分改修である為、既存と新たにつくる部分との間にどんな関係をつくりだすかが、計画に当たっての焦点になった。当初は要望を実現しながら既存にどう調和させていくかということから検討が始められたが、既存図面の上にスケッチを重ねていく内に、あえて既存とは調停しない関係をつくる可能性がみえてきた。見慣れてはいるけれど殆ど唐突に隣り合っている洋室と和室のように。
既存のありきたりな濃茶のフローリングの上に、白い壁が弧を描き、丸い孔が開き、テーブルが突き出し、飾り棚が取り付き、配線用の付柱が斜めに貫き、色彩が散りばめられ、エポキシ樹脂が流された。
新築とも、スケルトンリノベーションとも違い、既存の大部分には手をつけずに、調和させず、溶解させず、馴染ませず、乾いた油絵の上から新たな絵具を部分的に載せていく試み。
Photo: OFFICE YUKI KONKO
©OFFICE YUKI KONKO